OPT(Optional Practical Training)完全ガイド|申請方法・EADカード・注意点まで徹底解説
アメリカで留学生が就職を目指すなら、避けて通れないのが「OPT(Optional Practical Training)」。F-1ビザで学位を取得した学生が、最大12ヶ月間、専攻分野に関連した職種で働ける制度で、実務経験を積みながら次のキャリアステップ(H-1BビザやSTEM OPT延長)につなげるための“第一歩”です。
この記事では、OPTの申請プロセスから、必要な書類、申請タイミング、EADカードの重要性、よくある落とし穴まで、新卒・卒業予定の留学生が知っておくべきすべてをわかりやすく解説します。
OPTとは
留学生がアメリカで合法的に働ける制度
OPT(Optional Practical Training)は、アメリカのF-1ビザを持つ留学生が、専攻分野に関連する職種で最大12ヶ月間働くことを許可する制度です。
これは大学卒業後に就労経験を積むための貴重な機会であり、多くの学生がこの制度を活用して実務経験を積んでいます。
OPTは単なるインターンシップではありません。給与をもらってフルタイムで働くことが可能であり、
OPT中に得た経験をもとにH-1BビザやSTEM OPT延長にステップアップする人も少なくありません。
特に、日本人留学生にとっては「卒業後にすぐ日本へ帰る」のではなく、アメリカでのキャリア形成の第一ステージとして、OPTは非常に重要です。
OPTとCPT、H-1Bとの違い
混同しがちな他のビザ・制度とOPTの違いを整理しておきましょう。

CPTは「在学中の経験」、OPTは「卒業後の実務経験」、H-1Bは「就労ビザ」と覚えておくと理解しやすいです。
OPTの申請タイミングと必要書類
申請はいつからできる?90日前ルールを解説
OPTの申請で最も重要なのがタイミング。基本的に、卒業予定日の90日前から、60日後までの間に申請することが可能です。
たとえば、卒業日(最終授業日)が5月1日の場合:
- 申請開始可能日:2月1日
- 申請締切日:6月30日
この「90日前ルール」があるにも関わらず、ギリギリまで待つ人が多いですが、可能な限り早く申請するのが絶対におすすめです。
これは、申請後にEADカード(労働許可証)が届くまで通常3〜4ヶ月かかるからです。
EADカードの発行が遅れると、たとえ就職先が決まっていても、カードが届くまで働けないという非常にストレスフルな状況に陥ります。
早め早めの行動が、就職成功への最大のカギです。
必要書類チェックリスト
OPT申請には以下の書類が必要です。細かい点まで正確に揃えることが、スムーズな承認とトラブル回避の鍵になります。
- I-765(労働許可申請書):USCIS公式サイトからPDF形式で記入。ただし、多くの大学ではDSO(Designated School Official、基本的に留学生課のこと)と一緒に記入することを推奨または義務付けている場合があります。理由は、記入ミスによる却下や遅延を避けるため。まずは大学の国際オフィスに相談するのが安全です。政府当局に加えて、大学も詳しい記入ガイドを持っている場合があるので活用しましょう。
- 米国移民局 USCIS "Form I-765, Instructions for Application for Employment Authorization"
- 大学側のガイド例: "UC Berkeleyの場合" "UCSDの場合"
- I-20(OPT申請用):大学から発行された“新しい”I-20が必須。このI-20には、OPTの申請が記録されており、DSOの署名も必要です。また、過去のすべてのI-20も添付または保管しておくことが強く推奨されます。OPTやビザ関連で過去のI-20が求められることがあるため、紛失には注意しましょう。大学によっては有料で$200-300程度かかる場合もあります。
- パスポートのコピー(有効期限内):顔写真ページの鮮明なコピーを提出します。
- F-1ビザのコピー:現在のF-1ビザステッカーのページ。失効している場合でも提出が必要です。
- I-94(入国記録):US Customs and Border Protectionのサイトからオンラインでダウンロードし、印刷して添付します。
- 証明写真(パスポートサイズ)2枚:過去30日以内に撮影したものが推奨され、規定サイズや背景色にも注意が必要です(USCISの仕様に準拠)。
- 申請料($410)を支払った証明:紙申請の場合はチェック、またはマネーオーダー。オンライン申請では、支払い完了画面を保存。
さらに、2023年より導入された「Premium Processing(優先処理)」のオプションを活用することで、通常3〜5ヶ月かかる審査を約30営業日以内で完了させることが可能です。追加料金($1685)はありますが、時間に余裕がない場合や就労開始が迫っている方にとっては、有効な選択肢となります。
このように、OPTの申請は単なる書類提出ではなく、「戦略」と「正確性」が求められるプロセスであり、大学のDSOと密に連携しながら、計画的に進めることが成功の鍵です。
EADカード
EADカードとは?
EADカード(Employment Authorization Document)は、OPT申請が承認された後にUSCISから郵送される、合法的にアメリカで働くための正式な労働許可証です。
運転免許証ほどのサイズで、名前、写真、許可された就労期間が明記されています。
OPTを利用して働くには、このカードの現物が手元に届いてからでないと一切就労できません。
企業から内定を得ていても、EADカードが届く前に働き始めてしまうと、違法就労とみなされF-1ステータスを失うリスクがあります。
また、EADカードは単なる身分証ではなく、「労働許可証明書」としての絶対的な効力を持っています。
OPT期間中はこのカードが、あなたの「労働資格を持ったF-1学生である」ことを示す唯一の証拠です。受け取った際は、大切にしましょう。
日本に一時帰国する場合の注意点
「OPT申請したし、カードももうすぐ届くはず。ちょっと日本に帰ってこようかな…」という気持ちになるのも理解できますが、EADカードを受け取る前の帰国は非常にリスクが高い行動です。
なぜなら、OPT期間中にアメリカへ再入国するためには、次の5つの書類が必要不可欠だからです:
- 有効なF-1ビザ(入国時に失効していないこと)
- 有効なパスポート
- OPTのEADカード(原本)
- 雇用証明書(内定書または雇用予定のレター)
- OPT対応のI-20(DSOが発行・署名したもの)
このうち一つでも欠けていると、空港での再入国審査に通らず、アメリカに戻れなくなる可能性があるのです。
特に、EADカードをまだ受け取っていない場合は「就労予定が未確定」と判断され、不法入国を疑われるケースもあります。
加えて、OPT中は「フルタイムの学生」ではなくなるため、F-1ビザ保持者としての立場も微妙に変化します。
単に「学生ビザで戻ります」と言えば通じた以前とは異なり、「OPTを通じて就労予定の外国人」としての明確な証明が必要です。
したがって、EADカードを受け取るまでは帰国しないことが安心です。
やむを得ず帰国する場合も、上記5点の書類が完全に揃っていることを必ず確認してください。
F-1ビザとEADカードの違い
OPT中の滞在や再入国にあたって知っておくべき、F-1ビザとEADカードの役割の違いをご紹介します。

F-1ビザは“入国時の切符”、EADカードは“就労中の滞在根拠”。OPT中の再入国は、この2つをセットで持っていることが絶対条件となります。
OPT期間中の重要ルールとよくある落とし穴
OPT中の“90日失業ルール”とは?
OPTの承認後、EADカードに記載された開始日から起算して、90日間を超えて失業状態が続くと、F-1ステータスが失効するという厳しいルールがあります。
これは通称「90日失業ルール」と呼ばれ、多くの留学生が見落としがちです。
ここでの「失業状態」は、単に正社員として働いていない状態だけを指すわけではなく、以下の活動も「雇用」としてカウントされる場合があります:
- 有給・無給のインターン
- 契約社員や業務委託(Freelance)
- 自己雇用(Self-Employment)※要記録
- ボランティア活動(条件による)
つまり、給与の有無ではなく、「職務に関連した実務活動をしているか」が判断基準となるのです。
また、この90日は「連続」ではなく「累積」でカウントされますので、例えば5月に20日間、7月に40日間…と細切れの失業期間が合計90日を超えた場合でもOUTです。
失業日数の管理はSEVPポータルで行いますので、雇用開始・終了があった場合は速やかにポータルへ報告することが必須です。
勤務開始日の設定はどうすべき?
OPT申請時には、「いつから働き始めたいか(OPT開始日)」を自分で指定します。
ここで大切なのは、OPTの開始日は卒業(プログラム完了)日から数えて60日以内に設定しなければならないという点です。
たとえば卒業日が5月1日であれば、OPTの開始日は5月2日〜6月30日の間で自由に選べます。
しかし、「雇用主の都合で9月1日からしか働けない」と言われた場合、OPT開始日を9月1日に設定することは不可能です。
9月1日は卒業から60日を過ぎており、規定に違反するため、申請自体が却下されてしまいます。
こうしたケースでは、次のような最適な選択肢があります:
- OPT開始日を最大限遅らせて、卒業日から60日ギリギリの「6月30日」に設定
- その上で、雇用先に9月1日開始を了承してもらい、7月〜8月の2ヶ月少しは「unemployment期間」として扱う
この場合、90日失業ルールの中で2ヶ月(約62日)の余裕を使いながら、9月1日の就業開始に合わせることが可能です。
ただし、10月以降に就業開始となると、90日を超えてしまい、OPTステータスが失効する恐れがあるという点にはご注意ください。
これを避けるには、プロジェクトベースの早期参加、ボランティア形式の活動、または別の雇用を短期間挟むなどの工夫が必要になります。
このように、OPTルールを最大限に活用し、自身のキャリア戦略と失業リスクを両立させることが非常に重要です。
OPTの後のキャリア戦略|STEM OPT延長・H-1B・帰国含めた選択肢
STEM OPTでさらに2年間延長可能な条件とは?
OPTの基本期間は12ヶ月ですが、特定のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の専攻を修了した学生は、さらに24ヶ月の延長が可能です。これが「STEM OPT Extension」と呼ばれる制度で、合計で最長36ヶ月間、アメリカで就労することができます。
【STEM OPT延長の主な条件】
- 米国政府が認定するSTEM専攻であること(CIPコードで判定)
- 現在の雇用先がE-Verify制度に登録している企業であること
- 雇用主と学生が署名したForm I-983(Training Plan)を提出すること
- OPT期間中に延長申請を行うこと(有効期限の90日前から可)
STEM OPTでは、より高度なプロジェクトや長期雇用を視野に入れた働き方が可能になります。
しかも、H-1Bの抽選に落ちても、延長期間内で再挑戦できるため、移民ステータスの安定性という観点からも非常に重要なステップとなります。
H-1Bとの違いとOPT中の切り替えタイミング
H-1Bは「アメリカで専門職として長期的に働くための就労ビザ」であり、OPT後の一般的なステップアップとして最も知られています。
ただし、年に一度の抽選制(Lottery)であるため、希望者全員が取得できるわけではありません。
【OPTとH-1Bの違い】

OPT中にH-1Bへ切り替える場合、「Cap-Gap」という特別措置により、H-1Bの開始日(通常10月1日)まで合法的に働き続けられる猶予期間が設けられます。
まとめ|OPTを活かしてアメリカでのキャリアを確立するには?
OPTは、単なる「留学生のための特典」ではなく、アメリカで本気で働くための第一歩です。
- 申請は卒業日の90日前から開始可能。できるだけ早く申請しよう
- EADカードが届かない限り就労不可。再入国にも必須なので注意!
- 雇用の空白期間は90日間まで。戦略的な開始日設定が鍵
- STEM延長やH-1Bなど、OPT後の道をあらかじめ計画することが成功の秘訣
OPTの申請、開始、終了までのすべてを把握し、最大限活用すれば、現地就職・キャリア構築の土台をしっかり作ることができます。
よくある質問(FAQs)
Q1. OPT申請はどれくらい前からできますか?
A1. 卒業予定日の90日前から申請可能です。できるだけ早く申請し、EADカードの到着を待ちましょう。
Q2. EADカードが届く前に帰国しても大丈夫?
A2. おすすめしません。EADカードがないと再入国時に入国拒否される可能性が高いため、慎重に判断しましょう。
Q3. OPT中に働けるのはいつから?
A3. EADカードが届き、OPTの開始日になってからです。それ以前の就労は違法です。
Q4. 就職先が9月からと言われたらどうする?
A4. 卒業から60日以内(例:6月30日)に開始日を設定し、9月1日までを失業期間として使えば合法です。ただし、90日制限を超えないように注意。
Q5. STEM専攻じゃないと延長はできない?
A5. はい。STEM指定リストに該当する専攻でなければ24ヶ月の延長はできません。政府移民局のSTEM指定リスト(2024年版)を参照してください。